2年ほど前、某大学で講義をした際の質問と回答の記録をとっていたのですが、私の(偏った)国連観が表現されていて興味深いので、掲載します。批判が欲しい。
●国民が知らないところで国連の会議が行われているのを何とかするにはどうすれば?
○WHOの会議などは、旧厚生省が、外務省とともに対処方針を検討し、時に会議に参加しているが、これは参考になる。監査は会計検査院、というように、可能な限り国内官庁を絡ませることは一案だと思う。
●日本人を増やすのに、どういう採用方法をとるべきか。
○まず、派遣スキームの間口を広げるのと、派遣後の仕事の機会を広げることが必要だと思う。実際に国連で働くことで、必要な技能なりスキルを習得できる。
●日本の拠出を減らすことが可能か?
○可能だと思うが、選択肢として適当かどうかの問題がある。
●国連事務局の日本人数は、11パーセントが適当ということについて
○枠ではなく、目標値である。この枠に達していない国の若手にのみ、国連事務局に入るための試験(国連競争試験)の受験資格がある。
●「金をだして、口をださない」のは、何が原因か。
○会議で発言するのは、しんどいし、よく勉強しないといけないので、納税者なり国会議員なりがうるさくなければ、発言しない方が楽であるのは、明らかである。それを防ぐためには、国民がよく国連を理解することが必要だと
思う。
●会議でのプレゼンスを確保するにはどうすればよいか?
○日本の国連外交の効率化により解決することが適当だと思う。たとえば、組織の記憶(Institutional Memory)があれば、着任後からどんどん継続性のある有益な発言をすることは可能である。組織の記憶が、十分に蓄積されていないことが問題と考えている。
●国際公務員が日本に帰ってきて職がないのが問題ではないか?
○そのとおり。せっかくの知識を日本の国際協力に活用していくべきだと思うが、そのようなシステムがないことは問題である。無理をしてでも、そのようなシステムを作るべきだろう。
●NGO委員会で中国が力を振るっていることについて。
○国連では、決定に当たってコンセンサスを重視する。つまり、一国が強硬に反対すれば、とても時間がかかる。中国は、たとえ一国であっても力を持つことができる。
●国連の委員会の参加資格について
○選挙により選ばれる場合と、加盟国が自由に参加できるものがある。総会や総会の下の主要委員会は、加盟国が自由に参加できるが、NGO委員会や人権委員会などは、選挙により参加資格が決定される。
●国連を機能的、中立的にする方法について
○この場合、会議と事務局への対応の2つに分けられる。
会議については、日本が率先して、各国の偏狭、独善な意見を抑えていくことが適当だろう。幸い、日本を敵とみなしている国は極めて限られているので、適役と考えられる。アメリカの場合、何か発言しただけで、反発する国はいくらでもある。
事務局については、日本がその動き方に目を光らせることが重要である。
●外国のNGOに入るのはお勧めか?
○外国のNGOでまともなところは、博士がごろごろしていたりすることもあって、入るのが難しいことは念頭に置いておく必要がある。
●日本のNGOが活躍するための障害について
○資金面の問題、国民の支持などいろいろな障害があると思う。
●巨額な分担金を出すメリットは何か?
○国際社会からの信頼だろう。
ただし、一部先進国は、可能な限りリターンを得ようとしている。国連の中心はフォーラムだが、開発援助という機能もある。開発援助の機能も含め、「1ドルだして、1ドル回収する」というような方針をもった先進国がいるのは、批判的に評価していい。
●北朝鮮問題について
○北朝鮮問題が本格的に取り上げられるようになったのは、最近のことである。安全保障上の問題でも、印パ紛争などは、国連では、本格的には取り上げられていない。
●大金を出すことによって、国連にコミットしていく義務が二本に自動的に生じるのはおかしいと思うがどうか?
○心がけ次第である。大口拠出国、分担国がうるさいことをいわなければ、事務局の緊張感がなくなり、何もしなくなる。学校教育で達成度を評価しなくなるようなものである。そういったことを許容する国家でいいのか、という問題である。
●国連は自己利益の追求の場か?
○基本的にはそのとおり。各国が自己利益を追求しないと、フォーラムとして機能が失われる。つまり、世界の実情を反映した、納得性の高い決定が行われなくなる。
ただし、せめて先進国は国連を利用して金もうけをしようと考えるべきでない。国連が何かを買おうとする場合には、できるだけ開発途上国から買う方がその国の発展にとってよいと思うが、そこに先進国の一部が「俺のところで買え」と強制しようとするのは見苦しい。
●顔の見える貢献ができないのは、なぜか?
○国際協力に関する知識に乏しい、人材が少ない、国連といったフォーラムで政策を実現していく技に関する知識も乏しい、などいろいろあると思う。
●人材が育たないのは、大学の教育に問題があるのではないか。
○大学にも問題はあると思うが、実務教育をしていないことが原因とは言いにくい。
一般的には、実務能力は、仕事を通じて習得していく。大学では、基礎的な素養を身につけることが第一に考えられていい。たとえば、イギリスで外交官になろうと思えば、歴史や哲学を専攻すべき、という話もある。
●今後の日本の国連への立場
○近年一貫して、安全保障理事会常任理事国になりたい、と主張してきている。安保理理事国になって何をしたいのかが明確でないことが問題だと指摘する向きもありますが、平和構築に力をいれる方向に自然な流れとして動いている以上、日本の出番はあると感じる。
●人材育成の方策について
○国際協力に携わる人のキャリアパスを用意すること、これに尽きる。
現在は、「魔の5年間」という言葉があって、国際協力を志す人は、30代後半にその分野での職がみつからず、結局、別の分野に転進することが多くなっている。30代後半以降もそれなりに働いていける場所を用意するようにすることが必要と考える。
●国連は高齢化しているか?
○高齢化している。職務経験が5年くらいで十分なポストに、20年くらいの豊富な経験をもった人が応募した場合、後者を採用することになるなど、高齢化が進んでしまう採用システムになっている。ただ、人事管理改革で、経歴重視から能力重視の採用をするようになってきているので、少しは緩和される方向に向かうとみている。
●国連のお金の使い道を国民に知ってもらうにはどうすればいいか?
○国会などで取り上げることが必要だと思うが、それ以上に、日本人を増やすのが手っ取り早いと考える。日本人がいないと、日本に情報も伝わりにくい。
●日本が国連に与えるよい影響は?
○安定した財政的基盤を支えていることが第一に考えられる。これは、国連の活動を安定化させることに意義がある。一方で、黙っていたら、事務局が慢心する原因にもなるので、気をつける必要がある。
●日本人が国連のために金を使うことがよいことと単純に考える理由は何か。
○単に実態を知る機会が乏しいことが原因だと考えられる。
●日本の発言力について
○たとえば、PKO特別委員会での発言力は小さい。PKO特別委員会は、たくさんの軍隊を出しているところがえらい、という考え方が支配している趣です。
個別の委員会ごとにそれぞれ理由が違う。なお、第5委員会(行財政委員会)、人権委員会等では、かなりの発言力を持っている。
●拠出金が多いので発言権を拡大すべきというのは、問題ではないか?
○そのとおり。ただし、拠出金が多いと、自然に発言権が高まるので、それを国際社会にとってよい方向に使わないとすれば問題である。
日本は狭い国益に基づいて動く必要がないので、その発言権を利用して、国連がよりよい方向に動くよう努力するのが先進国としての義務だと考える。
●国連の効率化にどのような方策があるか?
○国連には、3つの監査機構がある。加盟国が、これら機構のレポートをよく読み、理解し、指摘された問題が2度と起こらないように監視していくことが近道である。
●アメリカの国連を軽視するような考え方についてどう思うか?
○アメリカの行動を抑制させるための手段として国連を用いようとする国が多くある場合、アメリカは国連を軽視する方向に動く結果になるのはやむを得ない部分もあるだろう。
●国連職員の給与について
○ニューヨークの場合、アメリカ連邦公務員でワシントン勤務の職員の1.3倍程度である。大学院卒業後、すぐに採用されたと仮定して年収6万ドルくらいである。ただし、昇給幅はそんなに大きくない。
●フォーラムとしての国連の能力向上について
○総会の活性化ということは、近年よく議論されている。安保理改革も、政策形成能力、合意形成能力の向上も理由のひとつである。
●日本人は日本にいるのが楽で好きだから日本人職員が少ないのではないか?
○国際協力を志望する日本人に十分な機会や支援を与えた上で日本人職員が少ないのであれば、成り立つ議論だと思う。
国連の職員には多数のタイプのポストがあるが、そのなかには、厳しい選考手続きがあるポストと、成績に基づかず情実での採用可能なポストがある。日本人は、前者に多く、後者に少ない傾向にある。
例えば、PKOミッションは情実での採用が可能であるが、そこへ20パーセントの資金を提供しているのにもかかわらず、1408名中日本人5名ということになっている。
厳しい選考手続きに破れた日本人はわんさかいるわけで、そういう人たちを情実での採用が可能なポストに送り込むくらいのことはやるべきだ。
●困っている途上国の人を本気で助けたいという純粋な気持ちだけで国際協力に携わることができると思いますか?
○できると思うが、国際協力を実施する機関も官僚組織なので、手続きとか書類の作成が仕事の中心になる。純粋な気持ちがために、こういったことにフラストレーションを感じることは多いと思われる。